お屠蘇(とそ)とは、屠蘇散という漢方処方を、お酒・味醂に浸けた「薬酒」で、新年
を祝うとともに、一年間の邪気を払い、長寿を願って正月に飲みます。
屠蘇散は、新しい年の出発に当たって、新陳代謝の滞りを清掃し、身体を清健にして、
長寿をはかるという意味で処方されたものです。

昔から、「一人でこれを飲めば一家に疫なく、一家でこれを飲めば一里に疫なし、元旦
にこれを飲めば一年間病気にかからない」と言われ、正月の祝いの膳には欠かせないも
のとなっています。

もともとは中国の風習で、嵯峨天皇の時代(9世紀初め)に日本に伝わり、宮中での儀
式として行われ、江戸時代には武家や一般の上流階級にも取り入れられるようになった
ようです。

屠蘇は、通常、屠蘇器(とそき)と呼ばれる酒器揃えによって供され、小・中・大の三種
の盃を用いていただきます。一家揃って飲むときは、年少の者から始めて、順々に年長の
者に回します。また、年始客には、誰にもまず「お屠蘇」を献じます。

屠蘇散によく使われる生薬とその効能
・白朮(ビャクジュツ)
キク科オケラまたはオオバナオケラの根 利尿作用、健胃作用、鎮静作用
・山椒(サンショウ)
サンショウの実 健胃作用、抗菌作用
・桔梗(キキョウ)
キキョウの根 鎮咳去啖作用、鎮静・沈痛作用
・肉桂(ニッケイ)
ニッケイの樹皮、シナモン 健胃作用、発汗・解熱作用、鎮静・鎮痙作用
・防風(ボウフウ)
セリ科ボウフウの根 発汗・解熱作用、抗炎症作用
・陳皮(チンピ)
ミカン科ウンシュウミカン果皮 抗炎症・抗アレルギー作用、健胃作用、鎮痙作用

これら生薬成分の効能から考えると、屠蘇散は胃腸の働きをととのえ、のどや気管支を保護する作用が
考えられます。
昔からの風習というだけでなく、現在でも、風邪を予防する効果などが期待できる飲み物といえます。
お正月だけに限らず、また薬用酒としてだけではなく、熱湯で振りだして漢方茶(ハーブティー)として
続けても効果は期待できます。自分専用の配合の「屠蘇散」を作ってみても楽しいですね。

屠蘇酒の作り方
延寿屠蘇散1包を、清酒180ml~360ml(一合~二合)に浸して、一晩そのままおき、翌日にお使い
ください。お好みに応じて味醂(みりん)を入れると、甘口の飲みやすい屠蘇酒になります。

漢方茶(ハーブティー)としても味わえます。
ティーポットかサーバーに、延寿屠蘇散1包を和紙の袋のまま入れ、熱湯500ml(2カップ半)を注ぎ
ます。3分ほど蒸らすと、美味しい屠蘇茶として味わえます。